本
文
摘
要
分成两种:挑発防衛(自招侵害)・相互挑発(喧嘩)
挑発防衛(自招侵害):自招侵害とは、急迫不正の侵害を自ら招いた者が当該侵害に対して構成要件に該当する防衛行為を行った場合、正当防衛として違法性が阻却されるのか、という問題である。日本の判例(最決平成20年5月20日)によれば、被告人の不正な行為により自ら招いた侵害に対しては、侵害者の攻撃が被告人自身の暴行の程度を大きく越えるものでないなどの事情の下で、被告人の反撃行為が正当とされる状況における行為とはいえないから正当防衛は認められないとする。通説は、理論構成はともかく、一定の場合には正当防衛の成立を否定する。これに対し、一部の有力説は、正当防衛の成立を認めたうえで、自招行為について構成要件該当性ひいては犯罪の成立を認める。「原因において自由な行為」における判例・通説の理論構成と類似するこの理論構成は、「原因において違法な行為 (actio illicita in causa)」と呼ばれている。
相互挑発(喧嘩):相互挑発としての喧嘩について判例は正当防衛は成立しないとしてきたが(昭和7年1月25日大審院判決刑集11巻1頁、昭和23年6月22日最高裁判所判決刑集2巻7号694頁)、具体的状況を考慮して正当防衛が成立する場合があることを示唆する判例(昭和24年2月22日最高裁判所判決刑集3巻2号216頁)もある。2017年(平成29年)1月11日には、前年6月に埼玉県川口市内の路上で60代男性Bとトラブルになり、Bに道を塞がれた為Bの自転車を蹴ったところ、Bに何度も殴られたため1発殴り返して転倒させ、Bの頭に全治6ヶ月の重傷を負わせたとして、傷害罪で起訴(求刑:懲役3年)された40代男性Aに対し、さいたま地方裁判所が「Bの行為は質的にも量的にも上回っており、Aの反撃は正当でないとは言えない」として正当防衛を認め、無罪を言い渡した